AI セキュリティは、AI システムに特化したサイバーセキュリティ分野です。これには、AI システムを脅威や脆弱性から保護する各種のプロセス、ベスト プラクティス、テクノロジ ソリューションが含まれます。
重要なポイント
AI セキュリティでは、AI データの保護、システムの整合性維持、AI サービスの可用性の確保を行います。
AI システムに対する一般的な脅威には、データ ポイズニング、モデル反転攻撃、敵対的攻撃などの種類があります。
AI セキュリティのベスト プラクティスには、データの暗号化、堅牢なテスト、強力なアクセス制御、継続的な監視が含まれます。
モダンな AI セキュリティ ツール、ソリューション、フレームワークは、進化する脅威から AI システムを保護するのに役立つ可能性があります。
AI セキュリティとは?
AI は、前例のないペースで、信じられないほどのイノベーションを世界にもたらしました。しかし、残念ながらサイバー犯罪者も、他の人々と同じくハイペースで AI テクノロジを取り入れ、新たなセキュリティ脆弱性、脅威、課題を生み出しています。
AI セキュリティ (人工知能セキュリティ) とは、そのような脅威から AI システムを保護するために設計された対策やプラクティスです。従来の IT システムをハッキング、ウイルス、不正アクセスから保護することが必要なのと同様に、AI システムにもそれ専用のセキュリティ対策を施して、機能、信頼性、保護された状態を維持する必要があります。
AI サービスの可用性の確保。他のあらゆるサービスと同じく、AI システムについても可用性と運用状態が維持される必要があります。AI に頼る人々や組織がますます増えるにつれて、このことはいっそう重要になります。セキュリティ侵害はダウンタイムを発生させることが多く、必要不可欠なサービスの中断につながります。
"AI セキュリティ" の主眼は AI システム自体を保護することです。つまり、AI のためのセキュリティです。その内容は、AI のモデル、データ、アルゴリズムを脅威から保護することを目的とした、戦略、ツール、実践によって構成されます。その役割には、意図されたとおりに AI システムが機能し、攻撃者に脆弱性を悪用されず、攻撃者による出力の改変や機密情報の窃取が発生しない状態を保つことが含まれます。
一方、"サイバーセキュリティのための AI" とは、組織が自分のテクノロジ システムすべてに対する脅威を検出、対応、軽減する能力を高めるために利用する AI のツールやモデルです。これは、組織が膨大な量のイベント データを分析し、脅威の兆候かもしれないパターンを特定するために役立ちます。サイバーセキュリティのための AI には、複数のソースから得られるイベント データやサイバー脅威データを分析し、関連付ける能力があります。
要約すると、"AI セキュリティ" は AI システムを保護することであり、"サイバーセキュリティのための AI" は、組織の全体的なセキュリティ態勢を強化するために AI システムを使用することです。
AI に対する脅威
AI セキュリティの一般的な脅威
AI システムは、企業や個人による利用が広がるにつれて、サイバー攻撃の標的にされることも多くなっています。
モデル反転攻撃は、攻撃者が AI モデルの予測に基づくリバース エンジニアリングによって、モデルのトレーニングに使用された機密情報を把握するものです。これは、世の中一般に知らせないことになっている機密データ (個人情報など) の漏洩につながるおそれがあります。この種の攻撃は、特に機密情報を扱う AI モデルの使用に重大なリスクをもたらします。
AI サプライ チェーンは複雑なエコシステムであるため、AI システムの整合性とセキュリティを損ないかねない脆弱性が潜んでいるおそれがあります。サードパーティ製のライブラリやモデルに含まれる脆弱性が原因で、AI システムが悪用に対して無防備になることも少なくありません。
AI の構成ミス
AI アプリケーションの開発時やデプロイ時の構成にミスがあると、そのことが原因になって、組織が直接的なリスク (例: AI リソースの ID ガバナンスを実装できない) や間接的なリスク (例: インターネットとの接点がある仮想マシンに脆弱性が存在することで、攻撃者による AI リソースへのアクセスが可能になる) にさらされる場合があります。
プロンプト インジェクション
プロンプト インジェクション攻撃は、正当なプロンプトに偽装した悪意ある入力により、ハッカーが、意図されていないアクションを AI システムに実行させるものです。攻撃者は、AI モデルを騙すプロンプトを作り込み、機密情報を含んだ出力を生成させます。
AI システムのセキュリティに関するベスト プラクティス
AI システムのセキュリティをしっかりと確保するには、技術的な課題と運用上の課題の両方に対応する包括的なアプローチが必要不可欠です。以下に、AI システムをセキュリティで保護するためのベスト プラクティスをいくつか紹介します。
データ セキュリティ
AI モデルのトレーニングに使用するデータの整合性と機密性を確保するために、組織は、以下のような堅牢な データ セキュリティ 対策を実装するべきです。
AI モデルを定期的に更新し、脆弱性にパッチを適用し、新たに出現する脅威に対しての回復力を高めます。
最適なツールで AI セキュリティを強化
AI システムのセキュリティ強化に役立つツールとテクノロジは数種類ほど存在します。それらには、セキュリティ フレームワーク、暗号化技術や、目的に特化した AI セキュリティ ツールが含まれます。
セキュリティ フレームワーク
NIST AI Risk Management Framework などのフレームワークは、AI に関連するリスクを組織が管理し軽減するためのガイドラインとなります。こうしたフレームワークを利用すると、AI システムの保護、潜在的なリスクの特定、AI モデルの信頼性確保に関するベスト プラクティスを実践できます。
暗号化技術
暗号化技術を使用することは、データと AI モデルの両方を保護するために役立ちます。機密データを暗号化すると、組織はデータ侵害のリスクを軽減でき、攻撃者によるデータ アクセスが万一成功した場合にも、データが使用されることを防止できます。
AI セキュリティ ツール
AI アプリケーションの保護を目的としたツールやプラットフォームは、さまざまなものが開発されています。それらのツールは、組織において、脆弱性を検出したり、AI システムを監視して潜在的な攻撃の可能性を察知したり、セキュリティ プロトコルを適用したりするのに役立ちます。
AI セキュリティの新たなトレンド
AI の普及が広がるにつれて、AI システムを狙う脅威の手口は今後もますます巧妙化していきます。大きな懸念事項として、サイバー攻撃の自動化にも AI が活用され、巧妙に標的を絞り込んだ攻撃作戦が効率よく展開されるようになることが挙げられます。たとえば、攻撃者は、大規模言語モデルと AI によるフィッシング手法で説得力のあるパーソナライズされたメッセージを作成し、詐欺を信じ込ませる可能性を高めています。そうした攻撃の規模と精度が、従来のサイバーセキュリティ防御に新たな課題を突きつけています。
このような脅威の進化を受けて、多数の組織が、AI を活用した防御システムを採用し始めています。そうしたツール (Microsoft の AI を搭載した統合 SecOps プラットフォームなど) には、通常と異なる挙動を特定し、攻撃への対応を自動化して、リアルタイムで脅威の検出と軽減を行う能力があります。
AI セキュリティ ソリューション
AI セキュリティの課題が変化し続ける中で、組織は、進化する脅威の情勢に対して常に積極的にセキュリティ戦略を適応させ、AI システムの安全性と信頼性を確保する必要があります。その戦略としては、包括的なセキュリティ フレームワークを採用すること、暗号化テクノロジとアクセス制御に投資すること、そして、新たな脅威と新たなソリューションに関する情報の入手を怠らないことが重要です。
モダンな AI セキュリティ ソリューションには、現在の新しい脅威に対する組織の保護能力を大幅に強化する機能があります。そうした強力な AI セキュリティ ソリューションを統合することは、より効果的に機密データを保護し、規制コンプライアンスを維持し、将来の脅威に対して AI 環境の回復力を確保するために役立ちます。
リソース
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